「国盗り物語 全4巻」読了。この本は、司馬遼太郎先生が42歳の時に執筆した本であり初期の名作と言われているシリーズ。
司馬遼太郎先生の作品は、全てが史実通りではなく、全てが真実ではないことくらい理解しながら読んだとしても余りある歴史書物。史料・論文ではなく小説なのですから、作者の思い・願い・憶測が文中に反映されることは当然で、重箱の隅をつつくような『異』を唱える読み方をしてはならない、と常々思っています。
歴史小説を読むと、もちろんのことですが「主人公」とその「敵」が登場します。小説を読み進めていくうちに、得てして主人公目線で一喜一憂するもの。しかしながら、目線を逆にすると、当然ながら「敵」も「主人公」になるわけです。
何が言いたいのかといいますと、戦国の世の武将たちは、生き抜いていくために、まさにその場その時を『一所懸命』ただひたすらに戦い、守り、そして耐え続けていたのであり、「いい武将」も「悪い武将」もないのだなぁと思うのです。
目線さえ変えれば、全ての武将たちが主人公なのですから・・・。
そんなことを改めて強く感じたのが、この「国盗り物語 織田信長編」なのです。
この「織田信長編」は『明智光秀編』と言い替えてもいいくらいのもの。
「信長との対比」更に「秀吉との対比」によって明智光秀を見事に描いています。
斎藤義龍により斎藤道三が討たれた後、美濃・明智城も陥落。
光秀は一介の浪人に成り下がります。
足利将軍家再興の大志を掲げて、ここから一人で道を切り開いていく光秀。
のちの光秀の娘・お玉(細川ガラシャ)の義父となる細川藤孝との出会い、
そして、細川藤孝と共に足利義輝・足利義昭を担いでいく話は実に興味深い。
その後、本意ではないものの信長に仕え始める光秀。
信長は、血筋や家柄を重要視せず『能力』第一主義で家臣を評価します。
ゆえに、新参の光秀は「多才な能力」と「元来の勤勉さ」で数々の戦功をあげることで信長に認められ重用されます。
このあたりでの「秀吉との対比」も実に面白い!!
そんな折の信長による「比叡山の焼き討ち」や、古くからの宿老である「林通勝」「佐久間信盛」への処罰を目の当たりにした時など、光秀自身が「信長の道具」に徹し切れず苦悩している様を実に細かく描いており、読んでいて切なくも苦しくも感じるほどでした。
その後の光秀が『本能寺の変』に至る直接的な理由は、いまだ数々の説があり明確ではありませんが、能力が高いが故の『自負心』と真面目すぎるほどの『実直な性格』が光秀を本能寺へと導いたことは十分に推察されるところです。
斎藤道三に触れ、新たな光秀像が生まれた今回の「国盗り物語」全4巻。
これだから歴史小説は面白い!
次なる本は『豊臣秀長~ある補佐役の生涯』
秀長が主人公の本などなかなか出会いませんので、これは楽しみ!(*^^*)
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