心の病理
「心」の生理機能が損なわれると血流に関係する障害や精神面の症状が現れやすくなります。「心」は火の性質を持つため、「過剰になり上昇しやすい」臓器とも言えます。
心の病証は大きく実証と虚証に分けられます。実証は機能が亢進した状態、虚証は機能低下や栄養不足の状態です。
≪虚証≫
●心気虚(しんききょ)
心の機能低下、特に循環機能の低下した状態と考えられます。主な症状は、動悸、息切れ、倦怠感、無力感などで、これらの症状は気を消耗する(体を動かす)と悪化します。
「心気」が不足したことで現れる証ですので「心気」を補う【補益心気】が必要となります。
●心陽虚(しんようきょ)
心気虚の状態が長く続くと、やがて心陽虚へと発展します。これは心気虚の症状に、手足の冷え、寒がり、顔色が青白いなど「寒」の症状が加わった状態です。(心気虚+虚寒症状)
「心気」の温煦作用が低下したことで現れる証ですので、心の陽気を補う【補益心陽】が必要となります。
●心血虚(しんけっきょ)
体液や血液の不足からくる心の栄養不良状態が「心血虚」です。症状は、動悸、不眠、夢が多い、物忘れしやすい、めまい、顔色が白い、舌や唇の色が薄い等があります。
「心血」が不足したことで現れる証ですので、「心血」を補う【補血・養心安神】が必要となります。
●心陰虚(しんいんきょ)
体液の不足から生じる「心の栄養不良状態」です。動悸、不眠、多夢、物忘れしやすい等の症状は「心血虚」と共通です。加えて、決まった時間に微熱が出る等の「虚熱」の症状が現れます。
「心」の陰液が不足したことで現れる証ですので、「心陰」を補う【滋陰・養心安神】が必要となります。