肝の病理
具体的な症状として、機能が異常に亢進している症状(実証)と、機能低下や慢性病に多い症状(虚証)に分けられます。
≪実証≫
●肝気鬱結(かんきうっけつ)
ストレスなどで気の流れが悪くなると、イライラ、情緒不安定、月経不順、上腹部の張った感じなどの症状が見られます。また、五行学説において「木(=肝)」と相克関係であった「土(=脾)」を抑えるため、消化器症状(悪心・げっぷ・お腹の張りなど)も起こることがあります。
この病態を「肝気鬱結」といい、肝の症状の中では最も多く見受けられます。「気滞」は『肝の失調』であるケースが多いものです。
肝の疏泄が失調したことであらわれる証ですので、肝の気をめぐらし、疏泄を整える【疏肝理気】が必要となります。
●肝火上炎(かんかじょうえん)
肝気鬱結が長期化する、または急激な精神的ストレスを受けた場合は、滞った気が熱を生じ、「火」の性質が現れてきます。この状態を「肝火上炎」といいます。
肝気鬱結の症状に加えて、怒りやすい、不眠、めまい、強い耳鳴り、顔面紅潮、ほてり、目の充血、便秘、月経過多などの『熱証の症状』が現れます。
「肝気鬱結」や「気滞」の持続によって生じる『熱邪』が原因ですので、肝の熱を取り除く【清瀉肝火】が必要となります。
●肝胆湿熱(かんたんしつねつ)
飲食の不摂生やそれに伴う胃腸障害のため、肝と胆が炎症を起こした状態です。「湿邪」と「熱邪」に犯された状態で、主な症状は、脇腹の痛みや張り、食欲不振、黄疸、口の苦みや粘り、ジュクジュクした湿疹やかゆみ、などです。
肝気鬱結による精神症状を併発しているケースが多く見受けられます。
「肝胆の湿熱」「脾胃の湿熱」によって生じる証ですので、湿熱を取り除き、肝の疏泄をめぐらせる【清利湿熱・疏肝】が必要となります。